2004年09月20日

ベースのアイドル

楽器をやっている人は、誰しも
「この人のように弾きたい!」
という、憧れのプレイヤーはいると思うし、
「あの人のようになりたい!」
という動機から楽器を始める人も多いと思う。

私も憧れのベーシストや、
プレイする際に参考にしているベーシストは何人かいるが、
一人のベーシストの何から何までを丸ごとコピーしたり参考にしたりしたことって、じつはあまり無い。

どちらかというと、各ベースプレイヤーの“オイシイとこどり”をしている気がする。

学生時代に夢中になって盗もうとしていたのは、

・ポール・チェンバース
・ジョージ・ムラーツ

上記二人のニュアンス。

とにかく、伸びやかな音を丁寧に堆積させ、
静かな高揚感を身体の内側から沸き起こさせる
ジョージ・ムラーツのノリに夢中になった。

決して音は跳ねず、跳ねないかわりに、
じっくりとレガートさせた音を連続させることにより、
最終的に生まれる圧倒的なグルーヴ感。

ポイントは、限界まで音を伸ばしきること。
次の音を出すギリギリ直前まで、音を切らない。
鳴らし続ける。
音と音を濁らせることなく、次の音を鳴らす。

この作業を何百回、何千回と繰り返すことによって、
あの独特な高揚感が生まれてくるわけだが、
言うは易し、行うは難しで、
この奏法を確立させるためには、それ相応の訓練が必要だ。
頭で分かっていても、指と心の持久力を身につけなくてはならない。

そのためには、ムダの無い左手のフォーム作りの必要があり、
とにかく、左手のフィンガリングの練習は、結構みっちりやったと思う。


まだまだ修行不足だが、それでも、比較的フラットでイーヴンな音のつながりの中からも、少しは粘りを出せるようになってきたんじゃないかと思う。


ポール・チェンバースのベースは、フレーズ作りの参考になった。
昔のウッドベースは一般的に弦高は高かった。
弦高は高ければ高いほど、ビッグトーンが得られる。
PA技術の発達していなかった時代、
ドラマーのリズムのガイドラインとなるよう、生音でも大きな音で“4つ”を刻む必要があったのだ。

しかし、その反面、弦高が高いと、ハイポジションにいけばいくほど、音程が取りにくくなるし、指の力も必要になってくる。
だからなのかもしれない。
チェンバースは、あまりハイ・ポジションを弾かない。
(もちろん、まったく弾かないわけではない)

ロー・ポジションから、せいぜいミドル・ポジションまでが彼の得意な“守備範囲”。

そのかわり、この狭い音域の中を、チェンバースは水を得た魚のように、自由に動き回った。

セッションやレコーディングにも引っ張りだこなベースマンだった彼。
短い時間の中、たくさんの曲を弾きこなさなければならない。
そのための知恵が彼の奏法とフレーズ選びには凝縮されていた。

ロー・リスク&ハイ・リターンな奏法。

出来る限りポジション移動を避ける。
そのかわり、同一ポジションの中から、
最適な音を選び出すセンス。

怪しい音や、ハズす音も時にはあるが、
最終的にトータルで見ると、ハズした音すらも
カッコよく感じさせてしまうほどの、
フレーズの説得力。
このベースラインつくりのセンスは、
かなり参考になった。

この考え方、奏法は、
モータウンのハウス・ベーシストの
ジェームス・ジェマーソンにもいえる。
彼のベースラインは、結構動くが、
実は、あまりポジション移動は頻繁ではない。

左手が“今現在”カバーしている音域の中から、
もっともかっこいい音をパッと抽出して、
その組み合わせがカッコいいベースラインにつながっているのだ。

ジェマーソンもレコーディングには引っ張りだこのミュージシャンだった。
つまり、1テイクか2テイクで曲をどんどん録音していかなければならない。
よって、彼の奏法もチェンバース同様に、
ロー・リスク&ハイ・リターンな、
ポジション移動を極力減らし、
狭い音域の中からも、効果的なフレーズを選ぶセンスが研ぎ澄まされていたのだ。

聴いている分には、
チェンバースもジェマーソンも
かなり冒険しているベースラインに聞こえるが、
“音”的な冒険はしていても、
“型(=演奏フォーム)”の冒険は意外なほどしていないのだ。

このギャップが面白かったし、
“捨てることによって得る”ものもたくさんあるんだなぁということを、彼らの音選びのセンスからは学んだ。

普通は、
ノリは黒人、
フレーズは白人、
なのかもしれないが、
私の場合は、逆。

ノリはジョージ・ムラーツや、ニールス・へニング・エルスティッド・ペデルセンのような白人から。
フレーズはポール・チェンバースに、ジェームス・ジェマーソンといったデトロイト出身の黒人を参考にしている。
posted by パピヨンズ at 06:27| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 楽器 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年09月18日

ベース

日本一、音が良いということで知られる
岩手県は一ノ関のジャズ喫茶「ベイシー」のマスターは、
レコード針はシュアのたしか56年物にこだわっている。

同様に、
私もベースにはこだわりがあって、
フェンダーの65年以前のベース、
つまりオールドにこだわっている。

持っているプレシジョンも、ジャズベースも
65年製のものだ。

レコード針も、ベースの音も、
関心の無い人にとっては、
どれも同じ音に聴こえてしまうのだろうけれども、
少なくとも、私にとっては大きな違いだ。

テレビ、パソコン、携帯…。
テクノロジーや技術の進化とともに、
これらのプロダクツは、
性能やスペックがどんどんと向上してゆく。
古いものよりも新しいもののほうが
使い勝手が良くなる可能性が高い。

しかし、楽器は別。

古くはバイオリンのストラディバリウスなんかがそうだが、
今のほうが昔に勝っているとは限らないのだ。

フェンダーのベースもそう。
今から40年前よりは、
現在のほうが、ベース作りのノウハウや
エレクトロニクスの技術も進化しているはずなのに、
やっぱり、ヴィンテージ・フェンダーの
独特のテイストは出せないままだ。

単純な音色の良さ悪さよりも、
アンサンブルの中に綺麗に溶け込み、
なおかつ低音と音の芯を失わずに、
きちんと綺麗に自己主張できる音色。

とくに頑張ってバキバキと弾いたり、
アンプやエフェクターの音作りに凝ったりせずとも、
シールドをアンプに直結させて、
つまみをフルテンにして、
普通に弾く。
ただそれだけでも、
充分に強い存在感を放つ音。

しかも、エキセントリックな存在感ではなく、
ただ普通に鳴らすだけでも、
綺麗に自己主張する音。

この普通っぽいけれども
確固とした存在感を残す音を出す楽器って
ありそうで実はなかなか無いのが実情なのだ。

だから、65年。
フェンダー社が大手企業に買収される直前に生産された、
大量生産ではなく、
クラフトマンシップの発揮された限りなく最後の楽器。

フラットな音ゆえに、
このフラットさは弾き手の存在そのものを
無垢に映し出す。
残酷なぐらい。
だから、同じセッティングでも弾く人が違うと
まるで違う音がする。

だから面白いのだ。

オールド・フェンダーの持つ味わいは、
技術は進めば進むほど良いとは限らないということを
教えてくれる。
物事は、目の前にある材料を駆使して、
頑張れば頑張るほど良いとは限らないということを
教えてくれる。


posted by パピヨンズ at 03:10| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 楽器 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。